​盛彦コラム

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#5 デフファミリー

2013/11/28

オレさ、デフファミリー。父母共にろうで、そしてオレもろう。

今まで『両親は健聴?』って聞かれた時に両親もろうだと答えると、

『いいね!幸せだね』っと言われてきた。

両親もろうなら、自由に手話でガンガン話せるじゃん!

そういう環境、本当に羨ましいよ。


両親も子供もろうだと、そういうイメージだよね。

でも、オレの場合は全然違うんだよ。

なんでかというとさ、父親は手話はダメだ、

声、口話が一番だという考え方なんだよ。

親戚や友達、先生などのまわりからの影響なのか

どうかはわからないけど、とにかくそういう考え方なんだ。


社会に出たときに困らないために、
声、口話は必要だと言う考え方を持っていたよ。

それに対して母親は黙って従うと言う状況。

父と母の会話は手話だけど、
オレが話すときに手話を使うと怒られるんだよ。

手話が上手だと両親も手話が上手だと勘違いされるけど、

オレは両親から手話を習ったわけではなく、独学で工夫して磨いて今までやってきた。

オレの同級生の両親は、健聴が多いよ。
オレの通ってたろう学校の中には、デフファミリーもいたけど、
その割合はかなり少ないんだ。

両親が健聴で子供がろうの場合、
手話ダメと言う人も中にはいたのかもしれないけど、

ほとんどが自由に手話を使って構わないという家庭が多かった。


オレの両親は手話を使うなと言うので、
怒られるのが怖くて話さなかった。
父がいない時に手話をし、父がこちらを向けば黙っていたよ。

高校にもなれば、気にせず手話をしていたけどね。

ろう学校の先生の考えも、手話よりも口話が重要という考え方だ。

そのせいか、オレの手話よりも同級生の方が手話は上手だったよ。
高校時代のオレと今のオレ、全然違うんだ。

まわりのみんなは手話を自然と習得して、本当に羨ましいよ。


オレさ…本当言うと…


ろう嫌だよ。


健聴に生まれてきたかった…。


本当に聴こえるってうらやましい。

聞こえたらいろいろな場所に気兼ねなく行けるよね。
オレ、手話のところしか行けない。
健聴なら、海外だって行けるし、英語だってしゃべれるし勉強だってできる。

映画もテレビも字幕なしでいつでも見られるよね。
どんなお店でも聞こえて話せれば困らないよね。

音楽だって聴ける。
オレさ、家電大好きだから、
カッコいいオーディオ機器とかもたくさんあるよね。
音楽ってオシャレなイメージあるし。
オレおしゃれなもの好きだしさ。

聴こえないと出来ないこと、いっぱいあるよ。

そういうことも含めて、
聴こえるってことは、本当に羨ましい。

もしオレが健聴だったら…とよく考える。

もし聴こえたら、違う人生だったのかなって想像してみる。
今までもそうやってずっと想像してきたんだ。


みんなもそういうことあるでしょ?
もし、男に生まれたら?女だったら?などいろいろ考えたりするでしょ?
それと同じ感じ。

どうだったのかな…と想像してみるだけだよ。


ろうとして生まれてきたことはよかったのか、意味があることなのか…

それは今はまだわからない。

ろうが悪いという意味じゃないよ。

良い経験もたくさんできたよ。


父が手話をダメだと言ったことに、
なんでなんだ!と不満を持ちながら、

ずっと苦しかったという思い出がある。

その後、サッカーに出会い、
日本語や筆談でやりとりする経験を経たことで、

今手話が向上したよ。

コミュニケーションをするために、
一生懸命努力し伝わるための工夫をし、考え、工夫力、想像力が養われて、そんな効果をもたらしたのかな。

自分を振り返ってみると、
ダメだダメだと否定され続け、不満や怒りや悲しみがごちゃまぜになったような感情をずっと持ち続けてきた。

今ようやく、それも悪いことばかりじゃなかったのかも…

と思えるようになってきた。

逆にこれをバネにしパワーにかえて、

押さえ込まれていたものを自分らしさに変えて表に出すこともできる。

悔しさや悲しみや痛みを経験したからこそ、

その痛みがわかることもあるよね。

そのパワーで、マイナスをプラスに変えることもできるよ。

他の人には真似のできない、自分、オレらしさって大事なことだよね。

人生の中で辛い経験が良いのか悪いのかはわからないけど、

それも経験として自分にとっては、よかったのかもしれないよな。

今まで両親にたいして、不満がたくさんあった。

でも、今、オレはこうして手話講師となったよ。

そして東京でいろんな生徒さんに出会ってきた。

オレしかできないことがある、
そういうものを持ってると言ってくれる人もいる。

環境や不満など自分ではどうしようもない、
理不尽で仕方のないこともたくさんあるよ。

でもやっぱり…

オレは、オレでしかできないことをこれからも見つけていきたい。


オレを産んでくれたことを今は感謝してる。

ありがとう。